印相印鑑の発売

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印相印鑑の発売

印相印鑑の発売は、前記の趣味のハンコが(名古屋地方発祥という)、昭和三十七年に運をよぶハンコ、幸福をもたらすハンコ、開運、吉相の印章として出現し、全国に販売業者が湧出した。一年たらずして、大々的な規模と化し、一つの信仰的に販路は拡大していった。趣味の印が、生年月日、と姓名の画数と、九星鑑定を中心として、特に姓名判断による画数運の吉凶、配列による鑑定が主体となっているのが態勢を占めていた。
印材の印面についても円形が最良とされ、円満で順風満帆を意味し吉運とされ、ゆえに一部でもかけの生じた印鑑は凶相に変わるという。角面の印章は几帳面な性格であるが角(カド)が立ち、万時円満を欠き、争い易く印を破る凶印という。楕円形(小判型)は遊惰に流れるので凶とされ、印字への模様入りは虚飾になり身体を損なうなどといい、印字が輪郭を離れるのは人の妨害が多く、万時引き込み思案となり、交際を嫌い運勢は衰微するといわれている。
総じて印面は余白部分と印字部分との陰陽の調和を図り、内に活力を満たし、外部への発展性を強める意味で印の文字は輪郭に接し意味は不明であるが、ケン乾・ダ兌・ゴン艮・リ離・カン坎・コンシン坤震・ソン巽の八方の外郭に接することを最高の吉相印と規定して販売などの宣伝用とも説明する商法もある。
印材の寸法についても主に、長さ六センチ丈が吉であり、四・五センチ丈もこれに順ずるという。印面は実印は十五ミリ丸 銀行員は一三・五ミリ丸 認印は一〇・五ミリの円形が吉相であるとし、夫婦印やセット印の販売が盛んになり、二本セットから四本・五本セットと量販態勢が取扱われるに従い、印面は一八ミリ(六分丸)から九ミリまで適用されていった。生まれた年「干支」による印材の運勢まで規定する業者も出現し、販売促進には新聞紙上一面の大金を掛けるもの、週間雑誌、テレビ放映、有名百貨店へのチラシ、通信販売と外販方式とあらゆる方法で販売は拡大していった。
これらの業者は山梨県かはもとより、全国に出現している。地方の印章専門店といわれる店舗でもほとんど印相印の販売をとり入れたのである。
約二十年間の昭和五十七年頃までは、印章業界は空前の好景気の時代であった。
しかし悪徳業者の暴利や心理的屈辱販売をする業者が現れ社会問題となり、全国的に消費者より非難の声とマスコミからの反論が日々に多くなり、ついには社会的鉄槌を受けるのである。これに加えてワシントン条約の締結により平成二年より象牙印材の取扱が問題となり、印相印販売は極端に低下しているのである。
昭和五十六年一月二十五日に開催された関東印章業組合連合会の理事会(横浜市)で、関連会長の田中会長よりの報告を見ると、高島易断の印相印代理店募集について報告がされているが、専門の印章店派手加入させんとする意欲があったのに驚いたのである。
◎貴社は優秀につき当易断の印相印の代理店になってほしいと勧誘とその掲示条件は、(1)印章店は代理店となり、客より受注した氏名を高島易断に郵送する。
(2)高島易断ではこれを印相印の印影にして速達で印章店へ送り、印章店で彫刻をする。(3)この印相印の責任は高島易断がもつ。
(4)高島易断では運勢がよくなるよう、毎月一日・十五日に護摩をたく。
(5)印送印をハ注した客の運勢が良くならない時は、一ヵ年間の無料診断券を出す。
(6)印相印と関連して外の件を易断したい場合は、五千円から一万円の見料を頂くが、代理店の印章店に三十パーセントの割戻しをする。
(7)代理店希望者には高島易断にて店舗を調査の上一地区一軒を選定する。
(8)現在の状況としては東京地区で三十五店舗が決定し、神奈川、埼玉、千葉、茨城は募集中である。
理事会は関連・全連共に印相印は信じていないので断ることに決し、高島易断に振り回されないよう注意することでこの件は終わった。
印相印とはの一、二例を掲載して見たのであるがそれぞれの印相印鑑販売業者の自説により移って多様にわたる説を設けているのが見られる。
本県で印相鑑定印で問題になったことは、「石材・貴金属製の印鑑はすべて凶材である。」とPRされたことである。本来、石材・金材には生命力はなく、また発展のための人生に最も悪く、病難、失敗を招くと宣伝されたのである。ついで象牙を最高に水牛・つげ柘植材が順を追って吉とし、印相印鑑定で販売された象牙印材は年間百トンを超えたという。
このような宣伝のため、昭和三十七年前までは、水晶をはじめ、メノー、虎目・石材・その他宝石印材が盛んに販売され、印材研磨・石材篆刻技術業界も発展したが、前述のようなP・Rで、これらの業者は大打撃をうけ、現在では石物篆刻技術者は十名たらずという沈滞ぶりである。
このような、象牙需要拡大は、一九八九年のワシントン条約締結の最大の引き金となったと見るべきである。
かつて印章王国山梨を作った水晶(石材一般)印材の販売の復活の道を切り開くのが現在の業界の急務であり、印章王国を救うことであろう。

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