新素材の印材出現

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新素材の印材出現

平成元年ワシントン条約締結国(一三二ヵ国)会議で動植物保護条例の決議があり、象牙材の取引が国際的に全面禁止となり、印章業界の主力商品であった象牙印材の前途は暗雲をもたらすのである。それを見越し、象牙に代わるべき素材への模索がいっせいに起こり、外観が象牙らしい科学印材の研究が盛んになった。
平成元年九月には、日本触媒化学工業(株)が数年前より研究を重ね、エブリナという新素材を発表、発売を開始したのである。その後次から次へと市場へ参入し、プロイン・アグニー・トランスラム・優雅・ビボティ・セラミックなどなど白色で象牙に見合うかが苦心素材の印材が生産発売された。その他、マンモス・シープホン・彩樺・積墨・プライヤー・ユニューン・エクシール・セラミックアイボリー・チタンまで新素材として登場した。
これらの素材は印章業界としては初めてのことであり、品質の分析や物理的な可否などの研究を重ね、新生素材印の販売へと努力しているのが現状である。
大手印鑑メーカーや全国の各組合などによると、企業が正式文書に使う印鑑は、耐久性などから象牙が主流であったが、野生動物保護の流れに加え印材に適した印素材の開発が盛んになってきたので、今後は新しい新素材の印鑑を採用する企業が増えるのではないかと見通していたのである。国内の象牙材の保有量の関係もあり、水牛材、柘植材など、天然素材が十分市場に保有されており、日本人の天然物への憧憬感が強い国民性もあり、新素材への市場への進出はなかなか顕著ではないのが現状である。
二年後か四年後のある程度の象牙材の自由化に期待する心情も業界間にはあり、それらも大きな要因となっての減少と思われる。
新素材のなかでもユニークな発表を紹介すると、「卵の殻+牛乳による人口象牙」であろう。酒井理化学研究所(福井県今立町)は、卵の殻を主原料とした人口象牙の開発に成功した。
成分が天然のものと変わらないほか、合成樹脂性に比べ吸湿性が高いのが特徴であり、印鑑やピアノの鍵盤など幅広い分野への応用が期待され、象牙は全面禁止のために、印章業界や楽器業界など実用化への期待が高まると発表されている。
これは殻後と砕いた卵に粘着材として牛乳を入れ、これに油脂分解酵素のリパーゼと重量調製のため酸化チタンなどを混ぜ合わせて作る製品で、原料が天然素材なので成分が天然の象牙とほとんど同じだという。毛細管があるため吸湿性に優れ、印鑑その他の商品として利用範囲は広いと発表され、実用化に向けて今後が注目されると強気ではあるが、印章業界にはその後出現したことはない。

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