今後の展望

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今後の展望

一 量から質の時代への対応
総理府の統計調査、意識調査等の資料を見ても、あるいは実際の人々の生活状況、また者は豊富にあり色々の品物が売られている状況をみても、国民の生活は豊かになったという実感がする。消費不況といわれても、物の不足している状態の時と、ある意味では、行き渡っている状態のときとでは様相が全く異なるはずである。前年同月比何%という伸び率の数字が低くなってくると、伸び悩み、あるいは不振と言われる。
これからの時代は、同じ品物が何年も続いて売れるということは困難になるであろう。例えば衣服の伸び率三%という数字があっても内部的には、婦人物紳士物等々とわかれ一方が伸びて、一方が減少ということがあり、さらに婦人物の中で、スーツが減少、ワンピースが上昇等々、さらにワンピースの中でも、若年層のものは上昇という具合、最終時には、ここの商品の伸び、減少の結果として三%となったのであり、ここの商品のデザイン、色彩、素材等々の変化の結果として三%となったのであり、個々の商品のデザイン、色彩、素材等々の変化の結果なのである。この「自明の理」を素直に受け入れて再検討していく心構えが必要である。商品の種類、数の不足している時代の感覚から、商品がゆきわたって消費者自身、何が本当にほしいのかわからなくなる時代の感覚に目を転じていかなければなるまい。
賞資源、省エネルギーと言っても、「つつましく最低生活で」と言う考え方は、現代においては、中々困難となっている。消費水準、生準を落とす生活に切り替えることは、現在の社会経済的環境と人々の生活意識の本では、極めて難しい。従って量ではなく質豊かにと言う発送につながるし、また人間の欲求の発展のステップからみても、そのほうが抵抗が少ない。このような時代になっているという認識が業界にとって大切である。
印章はわれわれの日常生活において、必要なものである。「サイン」とか「カード」で処理できる時代が到来すれば話は別である。ところで、原則的には印章は必要と思われる個数以上は、持つ必然性がない。必要と思われる個数を大きくするにはいかになすべきかが問題であろう。かりに業界の認識として、消費者は実印と認印、銀行員の三種であると考えても、消費者が、印章の材質と印章技術に価値を見出して、より上質のもの、より技術の秀でたものを次々と買ってくれるかもしれないし、印章は一個だけで良いとする価値観をもっていれば、それだけしか売れないことになる。すなわち消費者が、印章の「何に」価値を見出しているのか、この事を把握することが根本的な需要開拓の問題点である。
現代において消費者の真の需要を見つけ出すことは大変困難になってきている。このことを消費の多様化とか個性化という表現で表しているようだが、供給する側に立てば、これは難しい対応を迫られる問題であろう。このような状況の中で業界は今後どのような対応をしていくべきか業界全体が組織的に総力を結集し対応策を具現化し実現していくことが要請される。
ニ 需要開拓への対応
(一)商品のイメージアップをはかる
心を豊かにする商品づくりが必要である。商品は機能(役割)が中心となって購入されていくものである。しかし消費者が機能以外に、たとえば、ファッション性、文化性、個性化などの感覚的な欲求を持ち、それを具現化した商品を望んでいるとすれば単に機能だけの商品は売れない。より秀れた機能を持たせるか、消費者の求めるプラスアルファを付加するか、何等かの方法を考えて対応していかない限り商品というものは、いつの間にか、イメージとして「いつでも買える」「必要になったら買えばよい」ということになりやすいものである。
万年筆は筆記用具である。現在、小売店で売られている万年筆は「どう」なっているのであろうか。その経過をみると、二極分化の方向に進んでいるようである。すなわち機能に徹して良い質で安値なものと、高級イメージ、文化的イメージを豊富に感じさせる高価のものと、二極に遂次わかれていきつつある。
印章においても、単に証明機能に徹するだけでは売り上げには限度があろう。質の良い材料、優れた印刻技術により、人々に、「高級イメージ、文化的イメージ、を与えるような型、色、書体、印章ケースを含む全体の何か」を具現化した商品としての印章を作り上げていくことが要請されよう。消費者の選択眼は、より研ぎ澄まされている時代である。暮らしを豊かにさせてくれるもの、文化的なもの、心を豊かにさせる商品が人々の心を捉えていく時代であるという認識が必要である。
(ニ)業態の多様化を研究する
業態というのは経営の方法ともいえよう。販売方法、品揃え、陳列の方法、店舗、売り方、接客方法等々、販売に関する要素を以下に組み合わせて一つのまとまったものとして消費者に提示する経営の方法と考えられる。例えば百貨店、スーパー、専門店ディスカウントストア、通信販売等々は業態である。この意味では当業界はパイオニア的存在といえよう。通信販売、訪問販売、一般小売店、専門店等々と多くの経験を持っている。
業態は経営の方法でもあるので、経営者の革新的な創造的な考え方により、幾種類でもつくり出すことは可能である。しかし、定着し、業態として確固たる地位を築くには社会的経済的事情と消費者の意識という条件が、うまく合致しないと存続は出来ない。現代は業態開発競争の時代とも言われている。消費者の需要にいかに対応するか、そのためには業態は如何あるべきかについての研究と実現に「力」を結集している時代でもある。当業界においても流通問題に対処するには業態を検討していくことが要請されよう。
例えば一つの考え方として、取次販売店(チェーン店)を全国的に展開することなども考えられる。ある意が全国をブロック別に区分し、ブロックごとの取次店の総括店を設置しコンピューター集計をして生産手配をし、商品を消費者の手許に配送するはど色々の方法が考えられるであろう。また既存の専門店においては、店としてのイメージをどのように高めていき消費者の需要に対していくか、店舗、店舗内容、陳列、接客技術等々の研究、改善が一層必要とされる。
(三)技術の開発と向上をはかる
商品のイメージを高め、消費者により適切な業態を提示して販売していくためには、それらの裏付けとなる商品そのものが価値を持たないと実現は出来ない。それらの商品をつくろことの出来る技術の確保が必要となる。手作りのすばらしさ、本質的なものを表現するには、それなりの練磨と研究とが必要とされよう。その意味においても印刻技術者の一層の質的向上を目指して、例えばグループによる定期研修、あるいは優秀作品、優秀技術者の表彰、さらにそれらのPRを十分にしていくことなどが大切である。一方、機能に徹する質の良い安価な商品を作るには、「手」でなくてもすむ工程については極力近代的な機械設備を活用していくことが必要である。このような合理的志向を持って、技術開発あるいは技術向上を、商品の価値付けと連動させていかないと消費者の需要には対応しがたい時代となっていることを知るべきである。
(四)人材の養成と組織を強固にする
社会は人々の存在によって成立するものであり、業界も、それらの各種の仕事に、たずさわる人々の存在と、その業界の必要性を認める消費者の存在によって成立する。極めて当然の事柄であるが、この考え方を基本に持てば、業界を支えるそれぞれの分野で活躍する人々を多く養成することが大切なことになる。人材養成と確保がもんだいとなろう。技術開発をする人、技術を高度に習熟する人、優秀な販売技術を持つ人、品質管理が出来る人々等々多くの人材が必要とされる。
このような問題について業界が組織的に、計画的に実現を図る方策を見つけ出すことが必要となり、総力を結集するには、業界組織を一段と強力なものにすることが要請される。生産と流通を統合できる組織の拡充と、一層のコミュニケーションの充実、さらに財政確立のための基金の積立て、確保等の長期的基点を持った計画を樹立して実行していくことが要請される次第である。

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